城原川多自然川づくり 筑後川工事事務所

地域で紹介したい自然・歴史・文化・工業・産業など
・筑後川下流域の自然と風土・城原川多自然川づくり
紹介・解説できる人・団体(ボランティア学芸員
 
利用・交流できる施設
・筑後川工事事務所諸富出張所
お問い合わせ先
・国土交通省筑後川河川事務所

 城原川は、 弥生の遺跡 「吉野ヶ里」 の微高地を流れ、 干満差6mの有明海の潮の影響が濃い筑後川の下流域に流れ込む小さな川で、 下村湖人の 「次郎物語」 の原風景を残している。 連続した草堰 (木杭に柵を編んだ原始的な取水用の堰) とヨシが、 低平地を流れる 「野の川」 特有の穏やかで単調な流れに変化を与え、 豊かな生き物を育て、 北原白秋が 「ミズクリセイベイ」 と詩歌に詠った淡水魚 「オヤニラミ」 が多い。 オヤニラミはヨシの茎に産卵するため護岸工事で極端にいなくなる。 工事箇所は自然河岸のため豊かなヨシ原やオギ原が続き、 両岸コンクリートブロック張りの上流に比べ川幅が半分しかない。 地元は洪水の不安から毎年のように川幅を広げるためのヨシ原の撤去を要望していた。 当然、 ヨシを全部取り除き、 コンクリートで工事をしてもらうものと思っている地元に対して、 洪水時には野越 (下流に一気に水を集中させない昔からの治水技術) が9ヵ所残っていることから 「原風景を再現する」 という目標をたてた。 工事に入る前に 「久留米野草の会」 と協働で神埼町、 千代田町で 「多自然型川づくりと身近な野草の写真展」 を10日間開催し、 野草、 トンボ、 魚、 野鳥等、 小さくて見ようとする眼鏡がないと気付かない生き物、 身近な自然への 「めがね」 を全員に (設計者、 施工者、 住民) にかけることから始めた。
 工事現場には 「やさしくなろうよ。 魚にも」 と標語をかかげ、 通学路にある現場事務所には城原川の野草や魚を展示した。 「名前を知った野草は友達、 魅せられた花は恋人」 「ヨシやマコモの茎にはオヤニラミが卵を産んでずーっと守っているよ。」 「オドリコソウ草の花をよく見て、 一つ一つが佐渡おけさを踊っているよ」 とメッセージを送った。
 従来の工事では河岸は直線で樹木はすべて伐採されてきたが、 今回の工事の景観の拠り所は工事区間外の上下流に残された自然河岸であり、 石を詰めたカゴの上に現地の表土をかぶせ強度を確保しながら河畔に生えている柳を残すことや淵や瀬の保全を図ることで自然のワンドが形成された。
 豊かな自然に恵まれているため、 見えなくなった眠った感性を目覚めさせることから始めた川づくりであったが、 洗掘された岸辺には緑が戻り、 木杭 (杭出し水制) には、 ヨシやマコモが根付き、 魚が群れ、 原風景に馴染んでいる。
            筑後川工事事務所 田中秀子
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