柳川「水の会」 会長 広松 伝

地域で紹介したい自然・歴史・文化・工業・産業など
・上流矢部川での植林、自然型、下流有明会での潮干狩etc.
紹介・解説できる人・団体(ボランティア学芸員)
・会員約130名
利用・交流できる施設
・柳川市「水の資料館」(有明海の自然、沖の端漁港etc.)
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 水の会は県の南部、筑後川と矢部川が有明海に注ぐ間のまち、柳川市で生まれました。
 柳川地方は、今は「水郷柳川」と呼ばれる水郷地帯ですが、もとは水に恵まれない大変な低湿地帯でした。先人たちはこの地を堀を掘って拓きましたが、この平野をつくった筑後川は有明海の潮がずうっと上流まで遡るため、平野の用水を賄うことができませんでした。そこで、柳川地方では平野の南部を流れる小さな矢部川に依存せざるを得ず、水の確保には大変な苦心と努力が払われてきました。この矢部川をめぐって藩政時代には久留米、柳川の両藩が世界に例をみない熾烈な水争いを百数十年にわたって延々と繰り広げたほどで、この川は古くから極限まで利水開発が進められてきました。
 このように水に恵まれていなかったが故に、時には暴れる水をなだめ、少ない水を有効に使う知恵も高度に集積されていました。ところが残念ながら、ご多分に洩れず川や堀の汚濁荒廃が進みました。

 そこで柳川市では1978年から住民参加で再生(河川浄化事業)に取り組みました。その中で大勢の人たちと交流が生まれました。その一つが「八女・山門研究会」です。「矢部川流域にはすごい文化がある。勉強してみては…。」ほんの少し前までは流域には独自の文化が花開いていたんだ。地域の真の豊かさをめざすには、東京や福岡ばかりに目を向けるのではなく、地域の歴史や良さをもっと良く知らなければ…、流域独自の文化に学ぼう!と流域市町村の有志、郷土史家など十数名で80年から「八女・山門研究会」を始めました。
 この会をとおして、山村では材価の低落と労働力の不足、とりわけ若年層が少なく森林・山村ともども崩壊寸前にあることを知り、さらに、山村の人たちがこのきびしい状況の中で骨身を削っている姿に接して、山村づくりに参加していくことを決意したのです。
 このような中で水の会が発足しました。このきっかけも先の研究会同様、河川浄化事業に遡ります。この事業の成果を受けて、89年5月、第5回水郷水都全国会議が柳川市で開催されました。水郷ならではの多彩な催し、会議の内容の豊かさもさることながら、1200人を超える参加、とりわけ女性の参加が500人を超え、これまでにない多くの参加を得て画期的な成功を収めました。現地では、この成果を踏まえて活動を継続していこうということで、91年8月1日「水の日」を記念して主に福岡・佐賀県内の人たちが集まり、「水の会」を発足させました。
 柳川市にはさきに述べたように河川浄化事業で住民と行政の協働が実って以来、水環境の保全と再生に取り組んでいる大勢の方がたが訪れる交流があります。この交流を通し地域に根差した水の文化と、この水郷の先人たちの水とのつき合いの知恵に学んで、失われつつある水文化の再構築、継承発展と水環境の保全再生に役立てようと「水の会」を結成したわけです。会員は北海道から鹿児島まで約130名。他団体・個人との交流、毎月の例会のほか、講演会、シンポジウムの開催、見学会、会報の発行などを行っています。水環境の浄化を考えるネットワークを広げていく、いわば水文化の情報発信基地です。

 活動の重要な柱の一つに、矢部川源流の矢部村との交流を据えています。「有明海の幸も山からの贈り物」と心にきざみ、矢部村の小学生たちを招いて、下流域の小学生たちとの交流。また、矢部村の案内で、大杣自然塾、森の教室、源流体験キャンプ等を行っています。
 上・下流域の子どもたちは、矢部川源流を守ることは、下流の人たちの生活を守ることにつながることを身をもって認識したことが、作文・絵日記等からうかがえ意を強くしています。
 95年からは91年の台風19号で大きな被害を受けた矢部川源流の山へのボランティア植林事業にも参加しています。96年9月には有明海に注ぐ5県の仲間と大型フェリーを貸し切って海上から源流の山々を眺めて、海・山・川を語り合い、水系の浄化と保全の道を探り合いました。97年5月17・18日には柳川市で第5回九州水環境交流会を九州の仲間と開催しました。続けて5月25日に有明海の潮干狩「矢部川の川上と川下が有明海で交流」。7月24・25日には大杣自然塾(日向神ダムの謎を知ろう・水泳・箱舟・カヌー・川の生物調査・魚釣り・キャンプ)。98年5月24日には有明海の交流潮干狩。99年5月30日には6回目の有明海の交流潮干狩。2000年5月3日には、7回目の有明海学習と交流潮干狩り、7月22・23・24日には、矢部村で「子ども海彦・山彦ものがたり」。この交流事業は会発足後間もない92年3月29日「矢部川源流探訪と矢部村の元気づくり学習会」以来15回と回を重ねています。

 水の会では微力ではありますがこの輪を流域全体に広げ、さらには行政をも巻き込もうと、地道にねばり強く活動を続けています。川下と川上の良好な関係が再構築されて流域が一体となれたら、そのときはじめて川は清く豊かに流れて「いのちの水」とやさしさを恵んでくれるものとの信念のもとに活動を続けていくことにしています。
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