前津江村「いづの倶楽部」 代表 原田 俊郎

地域で紹介したい自然・歴史・文化・工業・産業など
・「筑後川源流の川祭り」毎夏実施、親子壁画制作等
紹介・解説できる人・団体(ボランティア学芸員)
・前津江村「いづの倶楽部」
利用・交流できる施設
・交流拠点/椿ケ鼻ハイランドパーク(TEL.0973-53-2358)
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 津江山系の御前岳には、筑後川源流域で最大の規模といわれるシオジの原生林があります。毎年7月、御前岳湧水(大分県前津江村)を訪れるのは久留米市の「筑後川の源流を探せ、体験ツアー」に応募した小学生40名。大地の中で蓄えられた湧水がやがて川となって下り、筑後川流域を潤しながら人々の生活を支えているという「命の泉」に触れた子供たちは、たっぷりと清水をお腹に納めます。水が取り持つ交流は定着し、前津江村の子供たちも久留米市の水道施設を訪問しています。「下流の人は水を大切にしていると子供らは感心します。源流域の私たちはかえって、水を意識していないかもしれませんね。」
 「いづの倶楽部」の佐藤昌治さん(前津江村)は、山村の子も今では川で遊ばないので仕掛けが必要と語ります。
 平成2年に地域おこしを目的に倶楽部を結成。親子での壁画制作等の活動をする中、川の水量減少や汚れを目前にして「筑後川源流の川祭り」を始めました。
「源流に住んでいるからこそ、川遊びを通して身近な自然をもっと見つめ直してほしいのです。」
 7月で4回目となる今では、日田市等から参加者も増えて上流域での交流が深まっています。
                    (季刊「筑後川4号」より)

 
日田郡の津江地区の山地は、尾ノ岳・酒呑童子山・渡神岳など1000mを超える山々と、それに続く尾根が連なり、かつては広く原生のままの自然林が残されていた。しかし今ではそのほとんどが伐採されて、どこも次々にいわゆる「日田スギ」の人工林に変えられていった。ただ、前津江村の福岡県との境にある御前・釈迦岳には、まだ手つかずのままのブナ林やシオジ林が残っていて、きわめて貴重な存在といわねばならない。
 釈迦岳山頂にはロボット雨量計が設置され、そのため車道が通じて大部分の木は伐られている。でもそこから西に約2km離れた御前岳まで、尾根筋には林下にスズタケが密生し、多様な樹種からなる落葉広葉樹のブナ林の植生が広がっている。
 御前岳の北側の谷部には、このような山地の奥に多いやはり落葉樹のシオジの大木が優先し、それに混じってサワグルミ、イタヤカエデ、ケヤキ、イヌガヤその他多くの木や草、シダ類からなる原生林の植生がある。シオジ林は前には各地にみられたが、今ではほとんどが伐り尽くされて、これだけの大きな規模で残っているものは全国的にも例がないほど珍しい。
 シオジ林の谷を登山道に沿って歩くと、大きなものは直径2m、高さ30mにもなる大木が繁り、昼でもうす暗いほどである。
 林内はコケや落葉で敷きつめられ、それぞれの季節ごと多くの植物が花を咲かせ、茂みの中からはいろいろの野鳥の声が聞こえる。他では味わえない深山の空気が漂っている。
 最近の私たちの調査では、ここには植物や動物(昆虫、鳥、哺乳類など)の種類が他に比較して大変多いことがわかり、またこれまで見つかっていなかった新しい種類も確認された。ここはきわめて高い自然度が保たれていて、まだ今後調査すれば多くの新しい発見の可能性が秘められている。
 ここを訪れる人は、人の手が加わる以前の太古のままの自然に接することができる。特に初夏の若葉、秋の紅葉の季節には本来の自然の美しさを十分に満喫させてくれる。しかしいま、各地で自然破壊が急速に進行しているなかで、この御前岳・釈迦地域でも少しずつ自然は荒らされてきている。私たちはこのかけがえのない自然遺産を、確実に次の世代に引き継いでいくべくみんなで力を合わせねばならない。
                                (郷土日田の自然調査会/小野孝)

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